2024.04.02
株式会社CAST
投資先インタビュー 株式会社CAST「あらゆる場所にセンサーを」
<会社概要>
会社名 :株式会社CAST
所在地 :熊本県熊本市中央区渡鹿5丁目7-6
代表取締役 :中妻 啓
事業概要 :センサー及び周辺機器・ソフトウェアの研究・開発・製造・販売
肥銀キャピタル株式会社(以下、肥銀キャピタル)は肥後銀行グループのベンチャーキャピタル(以下、VC)として、地域企業の活性化・地方創生を軸に熊本をはじめとしたさまざまな企業のニーズにお応えできるよう、運用ファンドを通した出資やコンサルティング支援を行っています。
今回は弊社が2度にわたって出資を行った、株式会社CAST(以下、CAST)の代表取締役社長 中妻 啓(なかつま けい)さんを迎え、CAST独自の超音波センサーの強みや、資金調達の経緯などについて語っていただきました。
「薄型・耐熱・フレキシブル」な超音波センサー
——貴社の商品・サービスについて教えてください。
中妻(敬称略):
CASTが提供しているのは、薄型・耐熱・フレキシブルな特性を持つ独自の超音波センサーを用いた、配管減肉モニタリングシステムです。昨今の工場プラントでは、老朽化や働き手の高齢化による検査員不足などで、監視不十分が原因の漏洩・爆発事故が年々増加しています。検査箇所に超音波センサーを設置し、常時モニタリングすることで、事故防止だけでなく設備寿命も伸ばすことを目的としています。
——CASTのセンサー・モニタリングシステムの強みは何ですか?
中妻:
超音波センサーはつけっぱなしが可能なので、「センサーを手に持ち、人が検査をして回る」という製造業の苦役を解消できます。
というのも、工場プラントの検査箇所は、高温・高所・狭所など、過酷な環境下であることが多かったんです。検査員による定期検査は、半年~1年に1回程度実施されますが、危険と隣り合わせの点検は負担の大きい作業でした。
CASTの超音波センサーは、薄型・耐熱・フレキシブルな特性を持ち、あらゆる場所に取り付けられます。必要な検査箇所に設置すれば、常時遠隔から、安全にモニタリングができるようになるのです。
出資を経て「シェアホルダー」に
——肥銀キャピタルのファンドから出資を受けようと思ったきっかけを教えてください。
中妻:
地域に根ざして経営を行う上では、地元を代表する銀行から出資を受けることがアドバンテージになります。そのため、創業時から「ぜひ肥銀キャピタルからの出資を受けたい」と考えていました。
——出資を受けて、実際に感じたメリットはありますか?
中妻:
おかげさまで、会社としてスムーズにスタートを切れました。また、先の話にはなりますが、今後CASTが上場するタイミングを迎えた際、現在の肥銀キャピタルとの関係は終了します。ですが、その後「CASTが海外進出する・新規事業を立ち上げる」など、攻めのファイナンスを行いたいときは、肥後銀行がメインパートナーとなるはずです。
CASTの成長ステージによって関わり方は変わるものの、肥後銀行グループとともにビジョンの実現を目指せるのは、とても心強いことだと感じています。
——貴社にとってVCはどんな存在でしょうか?
中妻:
資金融資はお互いが取引先という立場ですが、出資は「会社」を株式のかたちで「シェア」する「ホルダー」になることを意味します。肥銀キャピタルは、同じ目標に向かって進む「シェアホルダー」になっていただいたので、チームの一員のように感じています。
「人・お金・知識」が巡る、エコシステムの中核に
——今後の展望を教えてください。
中妻:
熊本はTSMCの工場新設をきっかけに、県外の資本が集まってきている状態です。そんななかでも、私たちは県内の資本として、グローバルに勝負できるビジネスを作りたいと考えています。そのためにも、CASTは2035年までに「人・お金・知識」が循環する、地域のエコシステムの中核になることを目指しています。
CASTが成長することで「熊本県には面白いベンチャー企業がある」と認知されれば、IターンやUターンで就職しようと考える人が増えるかもしれません。さらに、CASTが事業で十分な資金を生み出せれば、大学などに資金提供し、新たなイノベーションや発明を生むこともできるでしょう。すると、「熊本で学びたい・研究がしたい」という意欲ある学生や研究者が多く流入してくることになります。
県内に優秀な人材が増え、資金が巡り、蓄積された知識からイノベーションが生まれ、新たな産業が生まれる。これが私の考えるエコシステムです。CASTが大学発ベンチャーとして成長するだけでなく、熊本県内の経済効果を高める企業になりたいと、強く願っています。
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企業情報:株式会社CAST
「あらゆる場所にセンサーを」をミッションに掲げ、熊本大学発ベンチャーとして2019年に創業。薄型・耐熱・フレキシブルな超音波センサーをコア技術に、配管減肉モニタリングシステムを展開。工場で課題となっている、高温・高所・狭所などの過酷な環境下での人的検査を廃止し、製造業の苦役の解消を目指している。
代表取締役社長:中妻 啓
東京大学工学部 計数工学科を卒業後、同大学の情報理工学系研究科にて博士(情報理工学)号を取得。現在は熊本大学大学院 先端科学研究部助教授を務める。
2019年9月に株式会社CASTを共同創業し、代表取締役に就任。